
「LSD」というトレーニング方法について紹介します。
LSDとはロング(Long)、スロー(Slow)、ディスタンス(Distance)の略で、文字通り、「長い距離をゆっくり」走る練習方法です。
LSDは、市民ランナーからハイレベルなマラソンランナーまで広く取り入れられていて、長距離走をする人には欠かせないメジャーなトレーニング法です。
ここではそんなLSDについて、
・得られる効果
・どんなランナーに向いているのか
・やり方(ペースの設定方法、走る距離、時間、練習の頻度)
・効果を出すコツ
・注意点
といったところを詳しく紹介していきます。
目次
【レベル別にご紹介】LSDで得られる効果とは?
LSDの効果を一言でいえば持久力の向上ということになります。
ただしランナーの能力によって、ねらう効果も変わってきます。
あくまで目安としてですが、
・初級者: レースペースが6分/km以上
・中級者: レースペースが5~6分/km程度
・上級者:レースペースが5分/km未満
と、ざっくりレベル分けしてお話ししたいと思います。
初級者ランナーに期待できるLSDの効果
初級者の場合、長く走れるための基礎的な筋力と心肺能力を身に付けるために大いに役立ちます。
LSDのようなゆっくり走る練習では、有酸素運動で使われるいわゆる「遅筋」が鍛えられます。
レースよりも短い距離、短い時間の練習ばかりをしていると、実際にレースの距離を走るときに脚が前に運べなくなってきたり、つってしまったりということが起こります。
長く走るための「筋持久力」が備わっていないためです。
初級者はまず長く走るための「脚づくり」が必要であり、LSDはそれに適した練習法なのです。
速く走るには速く走るトレーニングが、長く走るためには長く走るためのトレーニングがそれぞれ必要不可欠、なんですよね。
中級者ランナーに期待できるLSDの効果
中級者にとってもLSDによる脚づくりは有効です。
10kmのレースからハーフへ、ハーフからフルマラソンへ、とステップアップしていく上で、その距離を走りぬくだけの筋力と自信を身に付けていく必要があります。
またLSDには、長くゆっくりと走ることにより毛細血管を発達させる効果もあります。
ランニングのような有酸素運動では、いかに酸素を全身に運べるかという能力が重要になってきます。
毛細血管が発達することにより、血液の循環が良くなり、有酸素運動の効率も上がります。
上級者ランナーに期待できるLSDの効果
マラソンを走る脚がすでに出来上がっている上級者にとっては少し事情が変わってきます。
例えばシーズンオフに練習量を減らして長めの休養を取ったりすることがあると思います。
あるいは怪我などの事情で練習ができない期間があったりもすると思いますが、そうした休養明けに、徐々に長距離の体に戻していく際に、LSDが効果的と考えられます。
またそれとは別に、上級者の場合はハードなトレーニングをした翌日などに、疲労回復のためにLSDを実施することもあります。
よく、「疲れを散らす」という表現をされることがありますが、発達した毛細血管に血液を巡らせて、全身の疲れを回収するようなイメージですね。
ゆっくりとランニングすることで、心身ともにリラックスできることも効果の一つと言えますね。
LSDはどんなランナーに向いているのか?
前述の効果からも分かるように、ずばり長距離走をするすべてのランナーと言えます。
・初級者は長く走れる脚と自信を
・中級者はさらに長く走れる筋力と心肺能力を
・上級者はシーズンインの体づくりや疲労回復などを
それぞれ効果として期待することができます。
あとは現実的なところで、トレーニングのために週末などにまとまった時間が取れる人、ですかね。
【段階別にご紹介!】LSDの具体的な練習方法
LSDの効果について分かったところで、具体的な練習方法について見ていきたいと思います。
LSDの練習方法1.ペースの設定方法
LSDは、一般的に7~8分/kmくらいの超スローペースで走る練習方法です。
あるいは普段のペースよりも1~2分程度遅いペースで、と言われることもあるようです。
いずれにしてもジョギングよりもさらにゆっくりで、よそ見したり、おしゃべりしたりできるくらいのペース、というのが正しいLSDのペースになります。
LSDの練習方法2.走る距離と時間
LSDは距離を決めて実施するよりも、時間で走るほうが一般的です。
ランナーのレベルによって、およそ90分~180分(1時間半~3時間)程度です。
初級者で長距離にまだ慣れていない場合は、60分くらいから始めてももちろん良いです。
脚に痛みがなく、気持ちよく練習を終えられるようになったら少しずつ時間を伸ばしていけばいいと思います。
LSDの練習方法3.練習の頻度
他の練習との兼ね合いもあると思うので一概には言えませんが、月に2回程度が一般的なようです。
何と言っても時間を必要とする練習方法ですから、週末に行う方が多いと思います。
例えば平日はジョグや短い距離のペース走などを行い、週末に他の長距離トレーニングとLSDを隔週やローテーションで組み込むと、自然と2~3週間に一度の頻度でLSDを行うことになりますね。
長時間走るので、ゆっくりペースとはいえ人によっては脚に疲労やダメージが残ります。
十分な休養を取り、回復が間に合わないような練習の詰め込みすぎには注意しましょう。
LSDの練習方法4.具体的なメニュー例
効果についての説明のところと同じ目安を用いて、初級者~上級者向けの具体的なメニュー例を挙げてみます。
初級者の場合
- LSD:7~8分/kmを60~90分
- ペース走:目標のレース距離(10kmなど)をレースより少しゆっくり
これらを週末に隔週で実施。
中級者の場合
- LSD:7分~7.5分/kmを90~120分
- ペース走やビルドアップ走:10~20kmをレース、あるいはレースより少しゆっくり
これらを週末にローテーションで実施。
上級者の場合
- LSD:7分~7.5分/kmを120分~180分
週末などに適宜組み込む。
LSDの練習方法で成果を出すたった一つのコツ
LSDをやってみるとこんなことを思うかもしれません。
「ゆっくり走れと言うけど、歩幅を狭くすればいいの? それとも歩数を減らせばいいの?」
ストライドを変えるのか、ピッチを変えるのか、という問題です。
ランニングにおいて1歩で進む距離をストライド(歩幅)、一定の距離に足が接地する回数をピッチ(歩数)と呼びます。
ストライドかピッチかという問題は、LSDを取り入れるランナーがよくぶつかる疑問点です。
これについては、ストライドとピッチ、どちらかだけを変えてどちらかを変えないで超スローに走る、というのはそもそも難しいです。
特に歩幅(ストライド)を変えないで歩数(ピッチ)を下げようとすると、一歩の滞空時間を長くしなければいけなくなるので、上に跳ねるような不自然な走り方になってしまいます。
これはのちに述べるLSDのデメリットでもありますが、ランニングフォームを崩してしまう可能性があります。
従って、主に歩幅を小さくすることでスピードを下げ、歩数は不自然にならない程度に下げる、というのがLSDで「上手にゆっくり走る」コツだと思います。
LSDに練習を取り入れる際の注意点
何と言っても長時間運動し続けることになりますので、脱水などに注意する必要があります。
熱中症の危険のある夏場はもちろんですが、冬でも長時間のランニング時は水分補給は必要になります。
個人的には夏は60分、冬は90分までは基本的に途中の水分補給はしませんが、それを超える場合は
スポーツドリンクなどで摂水します。
周回コースであればスタート地点にペットボトルを置いておいたり、そうでなければ手のひらサイズのボトルを携行して走ったりします。
またもう一つの注意点として、LSDは普段のランニングに比べてに超スローペースで走るため、ランニングフォームを崩してしまう可能性があります。
ゆっくりだからと言って姿勢を崩したりせず、腰を高く、姿勢を良く保ち、できるだけ普段と同じフォームで走るように心がけましょう。
また、それでもフォームの悪化が心配される場合は、翌日などにレペティショントレーニングなどのスピード系のトレーニングをやってフォームの確認を行うと安心です。
レペティショントレーニングについては別記事で詳しく扱っています。
フルマラソンでサブ3・サブ4を狙うなら練習でレペティショントレーニングを取り入れよう!
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スポドリをまとめて家で保管しておくと
ストックしておくと便利ですよ
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LSDではランニングフォームに気をつけて練習しよう!
いかがでしたか?
LSDは、初級者から上級者まで幅広く活用することができ、長距離走のトレーニング方法の中でも特にメジャーな練習法の1つです。
得られる効果としては、
・筋持久力の強化
・心肺能力の向上
・長く走れる自信をつける
・毛細血管の発達による有酸素運動能力の向上
・疲労回復
などがあります。
LSDのペースは7~8分/km、練習時間は90~180分くらいが一般的です。
他の長距離トレーニングと組み合わせて、隔週やローテーションで実施するのがおすすめです。
コツはストライド(歩幅)を狭めて、ピッチ(歩数)は自然な範囲で減らすことでペースをジョグよりも遅いところまで落とします。
くれぐれも脱水や、ランニングフォームの乱れには注意してください。
以上、長距離ランナーに欠かせないLSDトレーニングについてでした。
LSD以外の練習方法もご覧になってみてくださいね!