
寒くなってきました。いよいよマラソンや駅伝のシーズンですね。暖かなリビングで、のんびりテレビ観戦するのが楽しみな季節となりました。ミカンも食べながらね。
いえいえ、走るのをサボっているわけではありません。トップランナーの走りを見ながら、ランニングの基本を勉強。研究熱心な鳥北舜斗です。
さて、最近のマラソンやランニングを見ていて、気がついたことがあります。それは、ランナーの足もとがカラフルなことです。
特に男子ランナー。ほとんどの選手が鮮やかなピンクやグリーンの蛍光色のシューズを履いています。その中でも、ピンクが断然多い。この間なんて、テレビでずっと選手の足を見ていたら、目がチカチカしてきました。
いったい、あのピンクのシューズはなんなのでしょう。さっそく調べてしました。すると、なんとランニングの新常識と、東京五輪に向けた激しい競争が見えてきました。
目次
マラソンや駅伝の大会を席巻したズームX ヴェイパーフライネクスト%
あっさりとピンクの正体を明かしますが、ナイキの「ズームXヴェイパーフライネクスト%」ですね。まあ、けっこう、話題になって取り上げられていますからね。ああ、%は誤変換ではありません。私も最初、ナイキのホームページをみたときは、「なんで文字化けしてんの」と思いました。
読み方もそのまま「ネクストパーセント」。前のモデルが「4%」。推進力を4%アップさせるということでした。では、ネクスト%は?走るたびに何%か速く走れる期待を持たせてくれる靴、という意味だそうです。
日本で「あのピンクのシューズはなんだ」と話題になり始めたのは、9月に行われた東京五輪のマラソン代表選考レース「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」です。選手の多くがピンクのシューズを履いていて、なんと優勝の中村匠吾選手をはじめ服部勇馬選手、大迫傑選手とピンクシューズが1位から3位まで独占してしまいました。
ここで、本当はピンクシューズの集団が走る写真をお見せしたいところなのですが、お金がないので写真を買って貼り付けるというわけにはいきません。見たい方は、MGCの公式ホームページをどうぞ。
別に、みんなかわいい靴が好きだから、ピンクのシューズを履いているわけではありませんよ。
ちなみに私が見て目がチカチカしたのは、11月3日の全日本大学駅伝です。このとき、優勝した東海大学の胴上げの写真をしてほしいのですが、勝手に載せたら朝日新聞に叱られます。やはり、公式ホームページからどうぞ。
東海大学の胴上げシーン。選手の靴に注目!(全日本大学駅伝公式ホームページ)
写真を見ていただければ、分かるのですが、靴の底が厚くなっていますね。これが人気の秘密です。靴底を厚くしたことで、クッション性が増し、疲れにくいそうです。
常識を変えたピンクのランニングシューズのすごさ
ナイキが厚底シューズを発売したのは2017年6月。先ほど紹介した「ヴェイパーフライ4%」です。
それまで、ランニングシューズは底が薄いのが普通でした。なぜなら、底を厚くすると靴が重くなるからです。それは数十グラムの違いがレースの結果を左右するような世界でした。
でも、底を薄くすると、着地したときの衝撃が脚に伝わりやすいので、疲れやすく、けがもしやすくなる。ですから、これまでトップランナーの靴は、いかに靴底を薄くして衝撃を和らげるかが勝負だったのです。
そして、その常識を覆したのがヴェイパーフライです。素材の進化もあって「衝撃を和らげるために底が厚いのに軽い」という靴を発明しました。そして、ヴェイバーフライのすごさは、それだけじゃありません。
ナイキの公式ホームページをもとに説明しましょう。
ナイキ公式ホームページ ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%
クッション性があるのに軽い
ナイキが厚底靴の開発に乗り出したのは2013年です。そして、試作品が完成したのは2016年1月。その間、ナイキはクッション性があり、軽量の靴底の開発に時間を費やしてきたそうです。
そして、彼らはズームXと呼ぶ超軽量で反発性のある素材を完成させました。
ナイキによると、初めてシューズを見た女性選手は「かかとが高くて、とても速く走れそうには見えない」と思いました。でも実際に走ってみて、疲れを感じず、フォームを崩さずに長く走れることに驚いたそうです。
そして、このシューズを履いて、ケニアのマラソン選手、エリウド・キプチョゲ選手が2017年5月に2時間切りに挑戦。惜しくも2時間に25秒届きませんでしたが、この結果によって厚底シューズが注目されることになりました。
「シューズが勝手に走る」反発力
ヴェイパーフライの靴底は超軽量のクッションだけでできているわけではありません。炭素繊維でできたプレートが入っています。
このプレートは湾曲していて、力が加わると反発します。このため、足のつま先が着地するとプレートが元に戻ろうとして足を前に踏み出しやすくしてくれます。それは、シューズが前に動かしてくれるような感覚だそうです。
なんだか、すごいですね。でもね、これには1つ欠点があるのです。トップランナーなら、全く問題がないのですが、市民ランナーになるとちょっと考える必要があります。それについては、あとで触れますよ。まあ、よく言われている話なので、知っている人は多いでしょうが。
水をかぶっても濡れない耐水性
耐水性については、ネクスト%で飛躍的に向上しました。雨のマラソンレースを走った選手から、「雨が降ったらシューズが重くなるやんけ」と言われて、「そんなら濡れないシューズをつくったるわい」ということになったそうです。もっと上品なやりとりだったかもしれませんが、まあ、そんな話です。
そして、新たに靴の表面に使われたのが、ヴェイパーウィーヴという新素材。水を弾く一方で、通気性もあるので、雨や汗で靴が湿りにくいそうです。雨の日なんか、靴の重さはもちろん、靴の中がグジョグジョになったらイヤですよね。
あっそうそう、あのピンク色ですが、ランナーだけでなく、トップアスリートは「目立ちたい」と思っているそうです。それで、ナイキが選手たちに聞いたら「ピンクがいい」って言ったんですって。
大迫傑選手も試作品を見せられて、すぐに「ピンクがいい!」って言ったそうです。あっ、ウソだと思ってませんか?
その証拠にホラっ。
ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト% 新色 ピンクブラスト 9月15日に発売 大迫選手も履きたいと
ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%のお値段は?
さて、トップランナーから引っ張りだこのズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%ですが、私たちでも買えるのでしょうか。
もちろん、買えます。それも世界のトップランナーが履いているのと同じモデルが。実は、トップ選手も市販品と同じものを履いているんですね。
トップランナーはよく、自分の足に合わせて特注モデルをつくりますよね。でも、大迫選手も設楽悠太選手も、足幅が違うのに、同じ市販モデルを使っているそうです。ネクスト%にかかれば、足幅は関係ないんですね。
それで、値段ですが、税込み30250円です。
ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%
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うっ、ちょっというか、かなり高いです。でも、前のモデルでは売り切れて、ネットオークションなどで高値で取引されていたそうですが、ネクスト%は一部のサイズを除いて公式サイトから買えるようです。
「もうちょっと、安くないと手が出ない」という方は、ナイキズームフライ3をどうぞ。ナイキ公式で税込み17600円です。
ナイキズームフライ3
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価格は安いですが、炭素繊維製のプレートが入っていていますし、靴の表面にはヴェイパーウィーヴ素材が使われています。
ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%を履けば誰でも速く走れる?
さて、問題はこれです。ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%を履けば、誰でも速く走れるようになるのか?
さきほど、欠点が1つあると言いましたが、それに関わります。私は炭素繊維製のプレートを特徴について、「つま先が着地すると反発する」と書きました。つまり、つま先から着地しないと、効果がないんです。
あなたは走るとき、つま先から着地しますか?かかとから着地しますか?
前に書いたのですが、初心者ランナーはかかとから着地するのがよいとされます。
それは、つま先から着地すると、疲労がたまりやすくけがをしやすいからです。特に日本人は、かかと着地が向いているなどとも言われます。
しかし、マラソン強豪のアフリカ出身の選手らが、つま先から着地していることから、日本のトップランナーもつま先から着地する人が増えてきました。市民ランナーでもつま先から着地する人が増えてきているそうです。
でもね、今までかかと着地で走っていた人が、急につま先から着地しようとするとけがをしてしまいます。使う筋肉が違いますからね。ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%も、足を前に押し出してくれるということは、そんなに脚力がない人にとっては、無理矢理走らされるような形になってしまうのではないでしょうか。
そういう意味では初心者には使っても意味がない、使いこなせないシューズといえるのかもしれません。まあ、少なくても私には無理でしょうね。野球の飛ぶバットを使っても、素人がホームランを打てるわけではないのと同じです。
厚底シューズに他メーカーも参戦
こうやって、書いてくると厚底シューズはナイキの独壇場のようですが、他のメーカーでも厚底シューズの開発の動きがあります。
今年9月にはアシックスが厚底シューズの新商品「GRIDERIDE(グライドライド)」を発売しました。
この靴の特徴は、つま先の部分が上向きに反っていることです。こうすることで、足を効率的に前に運ぶことができ、エネルギーの消費量を抑えることができるそうです。
そして、ナイキとの大きな違いは、かかと着地を前提につくられていることです。そのため、かかと部分のクッション性を高めています。なにより、公式サイトの動画では、しっかり、かかとから着地しているではありませんか。
GLIDERIDEは、トップアスリート向きというより、市民ランナーを含めた幅広い層をターゲットにしているようですね。価格は税込み17600円です。
アシックス(ASICS) GLIDERIDE
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一方、ニューバランスは2018年12月に従来の薄底シューズの上級者向けモデルを発売しました。こちらは、当面薄底シューズにこだわるようです。
ピンクのランニングシューズの登場でマラソン記録はどこまで伸びる?
ナイキの厚底シューズの登場で、シューズの開発競争は新たな段階に入ったような気がします。でもね、心配事が1つ。近年のマラソンのタイム向上には、明らかにシューズの性能が貢献しています。
すると、公式レースで厚底シューズが禁止されることも考えられます。他のスポーツでも、道具の性能によって成績が左右されるようになると、必ず規制がかかりますからね。野球のバットとか、ゴルフのクラブとか。最近では水泳の水着も問題になりましたよね。
実際、一部からは「軽量で反発力のある炭素繊維の板は規制すべきではないか」という意見もあって、欧米では国際陸上連盟が調査に乗り出すなんて報道もあるようです。
まあ、調査をするにせよ、結論が出るのはまだ先のことでしょうから、しばらくはカラフルなシューズを目にすることになるのでしょう。
今年の冬のマラソンや駅伝のテレビ中継は、こたつに入ってミカンでも食べながら、熱いシューズの争いにも注目しましょうか。えっ、私のランニング? うーん、また春になって暖かくなったら、考えます・・・。
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