【前編】ランニングフォームを矯正しよう③効率の良いフォームを作るには肩甲骨を意識しよう!

【前編】ランニングフォームを矯正しよう③効率の良いフォームを作るには肩甲骨を意識しよう!
2019年1月22日 三井祐紀

疲れづらくて、より速く前に進める。

そんな「効率のよいランニングフォーム」を作るためのポイントを、シリーズでお伝えしています。

初回は「骨盤」、前回は「丹田」

そして、今回のテーマは「肩甲骨」です。

 

肩甲骨もランニングにおいて注目されることが多い部位ですね。

肩甲骨に関してよく見かける言葉としては、

・肩甲骨の動きが大事!
・肩甲骨をしっかり動かしましょう!

このように、肩甲骨は「動くこと」が大事とされていますね。

しかし、いったいどのように動くことが大事なのか?

ちゃんと把握されていますか?

 

「しっかり肩甲骨を寄せたりできることが大事なんじゃないの?」

 

果たして本当にそうでしょうか?

しっかりと肩甲骨を寄せることが正解でしょうか?

背筋を伸ばして、肩甲骨をしっかり引いて、腕をしっかり振って・・・

一見良さそうですが、実は「効率の悪いランニングフォーム」になってしまうリスクも合わせ持っています。

 

今回はそんな「リスク」についてお話させてもらうと同時に、肩甲骨の動きを「効率のよいランニングフォーム」に繋げるための理論と実践をご紹介したいと思います。

 

 

そもそも肩甲骨とは?

有名な骨ではありますが、肩甲骨ってどんな骨なのかご存知でしょうか?

そして、どんな動きに関係するのかご存知でしょうか?

上の図は背中側から骨を見た図です。

この図のように、肩甲骨は背中の上のほうに存在している骨です。

肋骨の後ろ側に張り付いているような感じです(図中右、赤色の部分)。

そして、上の図は前面から骨を見た図です(図中右、赤色の部分が肩甲骨)。

この図のように、肩甲骨は「上腕骨」という腕の骨の土台でもあります。

つまり、腕が動くためには肩甲骨が無ければならないのです。

腕の動きと肩甲骨は、切っても切れない関係にあります。

もしも肩甲骨が無ければ、これほど大きく腕が動くことはありません。

 

 

肩甲骨特有の構造特徴

肩甲骨には、もう1つ特徴があります。

それは、「主に筋肉で支えられている」ということです。

 

からだの中の骨と骨の境目は「関節」と言います。

・すねの骨と太ももの骨の境目は「膝関節」
・太ももの骨と骨盤の境目は「股関節」
・肩甲骨と腕の骨の境目は「肩関節」

このような「関節」と言われている部分は、独自の構造で骨同士がズレないようになっています。

 

ズレないようにする為の有名な構造物は「靭帯」です。

靭帯は伸びづらくて切れづらい「強固なヒモ」のようなものです。

これが、骨同士をしっかりと繋いでくれています。

その結果、関節を動かしても骨同士は位置をキープし続けることができます。

 

では、「肩甲骨」と「肋骨」の間はどうでしょうか?

骨と骨の境目ですが、実はここは「関節」ではありません。

肩甲骨は全て筋肉でおおわれていて、靭帯などが存在していないのです。

 

肩甲骨と肋骨の間は、膝や肩などの関節構造とは異なっています。

胴体と肩甲骨を繋いでいるのは、そのほとんどが「筋肉」です。

・よく言えば「制限が少なくて自由」

・悪く言えば「制限がないためにコントロールに難しさがある」

肩甲骨の動きは筋肉次第です。

それが解剖学的にみた肩甲骨の特徴です。

 

 

「肩甲骨の動き」とは?

肩甲骨の動きは、上下・左右・回転運動も含め、下の図のように自由に動くことができます。

Helen J.Hislop, 他:新・徒手筋力検査法 原著第8版. 協同医書出版社, 2008, p64より引用。

よく耳にする「肩甲骨をしっかり寄せて」というのは、全方向に動ける肩甲骨の動きの1部分でしかありません。

それなのに何故「寄せること」が重要視されるのか?

 

その理由は、私見ではありますが、

「皆さんの普段の姿勢が悪いから」だと思います。

・デスクワーク
・携帯
・パソコン作業
・長時間の椅子生活

これらは全て「猫背」のきっかけになります。

 

猫背状態での肩甲骨は、本来の位置ではなく、異常な位置に留まることを強制されます。

猫背になると、肩甲骨は外に広がって、上方向にズレてしまうのです。

そして、そのような悪い姿勢状態の継続により、ズレた位置が定位置となってしまいます。

このようにズレてしまった肩甲骨を正しい方向へと導く動きが、「肩甲骨を寄せる」「しっかり胸を張る」という言葉となります。

「肩甲骨を寄せる」という言い方をしたほうが都合がよい場合が多い。

その為、「寄せること」がフォーカスされやすいのではないかと思います。

 

実際のところ、肩甲骨は「寄せること」だけが大事なわけではありません。

寄せるだけが肩甲骨の動きではありません。

肩甲骨は「全方向にしっかり動かせること」が大事なのです。

 

 

「非効率なランニングフォーム」と肩甲骨を寄せることの関係

寄せればよいっていう訳ではないことは、ここまでにお話しした通りです。

しかし、姿勢が丸まりがちな現代人の多くの方にとっては、寄せることで肩甲骨は良い位置へと誘導されます。

なので、寄せることが「ポジティブな結果」へと繋がることが多いのも事実だと思います。

 

しかし、冒頭でお話しした通り、背筋を伸ばして、肩甲骨を寄せて、しっかり腕を振ってしまうと「非効率的なランニングフォーム」に繋がることも事実なのです。

その理由を説明しますね。

 

まず、効率的なランニングフォームの重要ポイントを軽くおさらいします。

  1. 上半身の位置
  2. 地面を押す方向

これがポイントです。

ポイントについての詳細はこちら⇒ 過去記事:「ランニングフォームを矯正しよう①」

 

このうち、肩甲骨の動きと関係性が強いのは「上半身の位置」です。

ランニングで前方向へと進むためには、上半身が後ろに残らないことが重要です。

しかし、肩甲骨の寄せを意識し過ぎるがあまりに、上半身を後ろに引っぱってしまうことがあります。

・胸を張る。
・肘を後ろに引く。
・肩甲骨を寄せる。

これらの意識のし過ぎは、上半身を後ろへと引っ張ってしまいます。

下肢は一生懸命に前へ行こうとしているのに、上半身は一生懸命後ろへ引こうとしている。

この状況は、まるで「引っ張り癖のある犬の散歩のようなもの」です。

無駄の多い走りそのものとなってしまいます。

 

 

肩甲骨の動きを「効率のよいランニングフォーム」へと繋げるために重要なこと

ここまでにお話ししたように、肩甲骨を寄せ過ぎると非効率的なランニングフォームになってしまう危険性が高まります。

しかし、肩甲骨がズレがちな現代人にとって、しっかりと寄せられるようになることがランニングフォーム改善につながる可能性があることも事実です。

 

また、その他にも肩甲骨を動かすメリットはあります。

肩甲骨が動くことで「やわらかい腕振り」が可能となります。

やわらかい腕振りは、首回りや腕の緊張を和らげて、余計な疲労感を生じさせません。

・走っていると首が凝る
・走っていると背中が張る
・走っていると腕が疲れる

こんな症状を感じる方は、肩甲骨が動いていないかもしれませんね。

 

このように、リスクとメリットが同居する肩甲骨の動き問題。

では、いったいどうすればよいのか?

1つの解決策はこれです。

「肩甲骨の動きを意識して、上半身の動きを誘導すること」です。

いったいどういうことなのか、説明しますね。

 

 

肩甲骨の動きを正しく意識しよう

「肩甲骨の動きを意識して、上半身の動きを誘導する」について説明します。

 

効率のよいランニングフォームの為には、「上半身の位置」が後ろにズレないことが大事です。

肩甲骨を寄せることを意識し過ぎてしまうと、上半身の位置が後方に引っ張られて良くないのです。

腕振りは「前後運動」です。

前後運動のうち、肩甲骨を寄せるという「後ろ方向だけの動き」を意識するからよくないわけです。

「前方向」へも肩甲骨の動きを意識してあげましょう。

左腕を引いたとき、右腕を前へ送る。

右腕を引いたとき、左腕を前へ送る。

そして、腕を引くときも、前へと送る時も「肩甲骨の動き」を意識するのです。

 

手先の「こぶし」に意識を向けて、腕を前後に振るのではありません。

腕の付け根の「肩甲骨」に意識を向けて、肩甲骨から腕を前後に振るように動かすのです。

 

肩甲骨から腕を動かすことを意識してあげると、結果的に胴体(肋骨と背骨)からねじれの動きが生じます。

このような「胴体からの回旋運動」が、効率のよいランニングフォームへと繋がります。

 

ちなみに、これを高いレベルで達成するためには「下腹部の力による骨盤の安定」が必須です。

「下腹部の力による骨盤の安定を目的としたエクササイズ」は、前回記事「丹田を意識しよう」で取り上げていますので、併せてぜひお読みください。
前回記事リンク⇒ 「効率の良いフォームを作るには丹田を意識しよう!」

 

 

効率のよいランニングフォームの為に、肩甲骨を上手に利用しよう。

効率のよいランニングフォームの為に、肩甲骨の動きは重要です。

しかし、「しっかり引く・しっかり寄せる」という動きだけに注目し過ぎると、かえって効率の悪いランニングフォームとなってしまうことがあります。

肩甲骨は、寄せることだけが大事というわけではないのです。

肩甲骨の動きを正しく意識して、前方向への動きも意識することで、胴体からの回旋運動を誘導することができます。

この「胴体からの回旋運動」によって、軸がぶれず、上半身をリラックスさせた腕振りが可能となり、効率のよいランニングフォームとなります。

 

では、【前編】はここまで。【後編】ではエクササイズ実践です!

効率のよいランニングフォームへと繋がる「肩甲骨を意識したエクササイズ」を行っていきましょう!

 

では後半では実際にエクササイズしてみましょう!

【後編】ランニングフォームを矯正しよう③効率の良いフォームを作るには肩甲骨を意識しよう!

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