
ランニングや長距離走をしていると、ランナーに訪れるという「ランナーズハイ」。
ランナーズハイってどんな状態なのか気になりませんか?
また、本当にランナーズハイは起きるのでしょうか。
そして、トップランナーもランナーズハイを経験しているのでしょうか。
自分もランナーズハイを経験したいという方のために、ランナーズハイの正体を探ります。
ランナーズハイってどんな状態?
さて、ランナーズハイって、そもそもどんな状態でしょうか?
走っている最中にハイになるって、まさか走っている途中に踊り出すわけじゃないですよね。
そこで、トップランナーに聞いてみましょう。といっても、別にマラソンランナーに友達がいるわけではありません。元五輪代表の浅利純子さんとは、昔、取材で話をしたことはありますけど。一度だけね。
そこでネットで探してみると、ありました。マラソンの岩出玲亜さんがランナーズハイについて語っています。岩出さんはアンダーアーマー所属で、2019年のMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)も走っていましたね。サッカーのJリーガー、鈴木大輔さんのYouTubeチャンネルです。
ランナーズハイについて語っているのは、2:00くらいからです。
鈴木さんが「再現性がない」と言っているように、すごく感覚的な話で、実際に体験していない私にはよくわからないのですが、感覚が研ぎ澄まされた感覚になるようですね。
走っているという感覚もなくなって、「あっ、もうこんなに走っている」という感覚でしょうか。
そして、それは苦しい時間を乗り越えると、やってくるようですね。
もう1人、アシックスのインタビューで、マラソンランナーの川内優輝さんも、ランナーズハイについて話しています。
――多くの海外トップランナーと走ってきましたが、強い選手と走る時に意識することは?
状態がいい選手って、その雰囲気が表情にも出ていて。そういう選手を見つけて、その後ろを走って、動きをコピーするようにしています。つまり相手によって自分の動きが変わる。そうするとリズムが安定してきて走りが楽になってくるし、ある種ランナーズハイ状態になって、距離もスピードもタイムもペースも全部忘れて、その人をマークすることだけに集中できます。自分自身と戦うというよりは、他人ありきで競り合うのが好きなんです。そうやって走りながら、ここで全力を出して負けてもそれは自分の実力不足だと思えるところで腹を括って勝負をかけていく。頭をフル回転させて、常に勝負どころを見極めています。
川内さんもランナーズハイとして集中力を挙げていますね。他の選手と競い合うことが好きで勝負どころの見極めに集中する川内さんは他の選手の動きに没頭できるようになるのでしょう。
岩出さんは、周囲の状況に敏感になり、沿道の人たちがよく見えるようになるのでしょうね。
でも、よくランナーズハイで、幸福感が得られるという話も聞きますよね。でも、トップランナーは幸福感よりも集中力の高まりを感じるようです。人によって、幸福感を感じる人と集中力を感じる人がいるのでしょうか?
そこで、大学時代はマラソン選手だった妻に聞こうと思います。妻は、出身大学陸上部でのマラソン記録を最近まで、保持していたそうです。この間、「ついに破られた」と言って悔しがってましたけど。本当ですかね。
でね、「ランナーズハイになったことってある」と聞くと
「毎日、走ってるとな、走ることがやめられなくなんねん。もう、毎日毎日、走らずにはいられなくて、休もうと思っても、休まれへん」。
ああ、読みにくかったらすみません。妻は大阪出身なもので。
でも、これってランナーズハイですか?「やめようと思ってもやめられない」って、何か別の話をしてませんか?ランナーズハイ中毒ってあるんですかね?
誤解されそうなので、この話は他人にしないよう願うばかりです。
ランナーズハイの原因はエンドルフィン?
では、ランナーズハイはどうして起きるのでしょうか?
これも、いろいろと研究されていて、ランナーズハイは、β-エンドルフィンの作用によって起こるとされます。
では、β-エンドルフィンとは何か。
脳内で働く神経伝達物質の一種。鎮痛効果や気分の高揚・幸福感などが得られるため、脳内麻薬とも呼ばれる。
脳内で働く神経伝達物質「エンドルフィン」のひとつで、モルヒネと同じような作用をする物質です。
エンドルフィンは、子牛や豚の脳から発見されたもので「体内で分泌されるモルヒネ」を意味しています。モルヒネの数倍の鎮痛効果があり、気分が高揚したり幸福感が得られるという作用があります。エンドルフィンにはアルファ(α)・ベータ(β)・ガンマ(γ)の3つがあり、β-エンドルフィンはその中でも苦痛を取り除くときに最も多く分泌されます。
マラソンなどで苦しい状態が一定時間以上続くと、脳内でそのストレスを軽減するためにβ-エンドルフィンが分泌され、やがて快感や陶酔感を覚える「ランナーズ・ハイ」と呼ばれる現象がよく知られています。
つまり、苦しい状態が続くと、その苦痛を取りのぞこうとエンドルフィンが出て、いわば「脳を錯覚させてくれる」ということですね。
しかし「脳内麻薬」とは、すこし物騒な名前です。鎮痛効果はわかりますが、ひょっとして中毒性もあるんですか?
こんな気になる記事もあります。
[ワシントン 19日 ロイター] – 日焼けの習慣は皮膚がんのリスクを高めるだけでなく、日焼け行為そのものに中毒になる危険性があることが、最新の研究で明らかになった。19日に学術誌「セル」に掲載された同研究によると、紫外線を慢性的に浴びていると、脳内麻薬とも呼ばれる神経伝達物質エンドルフィンの分泌が促されるという。
実験はマウスを使ったもののようですが、やはり中毒になる危険性があるということでしょうか。
すると、やはり私の妻はマラソン中毒患者だったのでしょうか?今はすっかり克服したらしく、いつもコタツでミカンを食べながら、マラソンや駅伝の中継を見ていますが、本人はちっとも走りません。
エンドルフィンではなく、カンナビノイド?
ランナーズハイを引き起こすのは「エンドルフィン」という脳の中の物質だったんですね。エンドルフィンは、苦しいことを一定時間続けていると、出てくるそうです。みなさんも、ランニングで苦しくなっても、やめずに続けていれば、幸せな気分になれるかもしれま・・・
と、書いたところで、「ランナーズハイの原因はエンドルフィンではないかもしれない」との情報が!
えっ、どういうこと?と調べてみると、別の物質が原因だという説が有力になってきているそうです。
SciShowは、科学のさまざまな分野について、子供にも分かりやすく説明する動画番組です。「ランナーズハイの原因は」というタイトルで、新たな説を紹介しています。
えっ、英語が分からない? では、こちらの助けを受けてください。
logme「ランナーズハイの気持ちよさはマリファナと同じだった?」
logmeは、国内外の記者会見やスピーチの文字起こしをしてくれるサイトです。
そのサイトで「SciShow」の日本語訳を読むと、実は「エンドルフィン説」に変わって、最近は「内因性カンナビノイド」が原因だという説が有力になりつつあるそうです。
カンナビノイドとは、まさに大麻の主成分で、痛みを抑えたり、食事をおいしく感じさせたりする効果があります。それと同じ物質が体内で生成されると「内因性カンナビノイド」というそうです。
つまり、「脳内麻薬」の名前通り、麻薬の成分によって痛みや疲れを和らげ、幸福感をもたらしてくれるということですね。
詳しくは日本臨床カンナビノイド学会公式ホームページを見てください。
いずれにせよ、苦しいランニングを続けていると、その苦痛を和らげる物質が体内で生成されて、痛みなどを和らげてくれる。そして、何かのタイミングで幸福感や研ぎ澄まされた感覚などをもたらしてくれるということのようです。
カンナビノイドの研究は、さまざまな角度から行われているようですから、いずれもっと詳しいメカニズムがわかってくるでしょう。
「たまに来るから楽しい」の気持ちで
ランナーズハイについては、いろいろな研究はされているようですが、はっきりと解明されているわけではありません。まあ、脳の
仕組みに関わることですからね。
人の脳はまだまだわからないことだらけです。私は脳の研究者ではありませんが、きっと、そうです。
苦しさが限度を超えると、ハイになるというのは、一種の防御本能のようなものなのでしょうか。あまりの苦しさに、脳が「もう限界だ。苦痛を和らげないと死ぬぞ!」と誤解してしまうとかね。
ワーカーズハイの場合は、本当に限界のときもあるのでしょうが。
ですから、ランナーズハイって、何かの方法を使って経験するというものではないと思うんです。
だって、岩出さんも、鈴木さんとの対談の中で、こう言ってるんですもの。
「たまにくるから楽しいんじゃないですか」
「毎回毎回自らこさせてたらランナーズハイじゃなくなる」
てね。
やはり、ランナーズハイは頑張って走っているランナーに、ときどき届く贈り物なんです。きっと。
私もワーカーズハイになる前に少し休みます。ランナーズハイはいつかきっとね。
ランナーズハイ以外にも、ランニングがもたらすメリットはたくさんあります。